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2016年12月20日火曜日

読書レビュー8 誰にも尋けないおしりの難病

神経因性骨盤臓器症候群(NIS)という病気を提唱された、高野正博先生の一般向けの書籍です。

NISとは、肛門や直腸をコントロールしている仙骨神経の障害が原因で、肛門痛・便漏れ・ガス漏れ・残便感などの排便障害が起きる病気のことです。
実際これらの症状で悩んでいる方は大勢いらっしゃるのですが、どこの病院でも治療してもらえないどころか、そもそも理解してもらえないことが多いようです。そんな人向けに、なぜこの症状が起きるのか分かりやすく解説してあり、悩んでいる人は是非読んでみましょう。

内容ですが、まずNISの主症状(肛門痛、便・ガス漏れ、排便障害)が解説され、続いて各検査方法と高野病院で行っている治療法が述べられています。 内容も分かりやすく、特に次のくだり、
 ・神経の障害で、直腸肛門がうまく動かず便が出ない
 ・便を出そうと、下行結腸(大腸の左側)がぎゅっと収縮する
 ・便・ガスが通過できず、左上腹部にたまる
 ・その結果、お腹が張る、腹痛が起こる
などは納得される方も多いのではないでしょうか。


ただ個人的に惜しいなあと思う部分もあります。 一例をあげると42ページ、仙骨神経の圧痛について
この場合不思議なことに、右より左側の神経が悪い方が多く、左だけが痛む、また右より左の痛みが強いという方が多いのですが、この左右の差がどこからくるのかはまだ不明です。
という記述があります。

しかし私の臨床経験からこの左側を痛めている人は、ある特定の姿勢を取っていることが多いことが分かってきました。その姿勢とは左側に体重をかけて長時間座っているというもので、そのせいで左側の神経が常に圧迫されて痛みが引き起こされているようです。では何で左に体重をかけているのかというと、右手でペンを持ったりマウスを操作したりするとき、左のお尻に体重をかけているとやりやすくなるんですね。さらにこの状態でガスを気にしてお尻に力を入れていると、神経を締め上げるようになり痛めてしまうと思われます。


ところで私が最も注目したのが、第3章「おしりの自己臭症」です。
この章だけで実に59ページ、全体の34%、一番ページ数が多い章になっています。この力の入れ具合から、自己臭症の患者さんがいかに多いかが読み取れます。

ちなみに自己臭症とは、要は自分は臭いと思い込み、周りの人の行動全てを自分の匂いと結びつけて気に病むことで、口臭・体臭・腋臭などがきっかけとなることが多いと言われています。この本ではNISということで、おならや便臭がきっかけとなって発症するパターンが書いてあります。

この自己臭症というのは非常に厄介で、本来の定義から言うと匂いなどは単なる思い込みで、精神的な問題だけであるとされています。しかしこのガス臭・便臭の場合は完全に気のせいとも言えないんですね。
高野先生がこの本でお書きの通り、ガス臭や便臭がきっかけの場合は、そもそも肛門の括約筋がゆるい人が多いようです。このパターンでは普段は大丈夫なのにたまに匂いがしたりします。そうするとやっぱり自分はいつも臭いんだと確信し、周りの人のあらゆる行動は全て自分が臭いからだと決めつけてしまいます。
例えば隣の人がガムを食べはじめると、自分が臭くてその匂いをごまかそうとしているからだとか、お店に入った時たまたま入れ違いに出ていく人がいれば、それは自分が臭いから出ていくのだと思ったり。

こうなると、身体より心、すなわち認識の仕方を変えなければ良くなりようがありません。高野病院では検査をして肛門が緩んでませんよとか、水素ガスを注入して出ていませんよと確認してもらったりして、漏れていないと認識してもらい、少しずつ自信をつけていく方法をとられているようです。

NISの症状では肛門痛や便漏れがあるのですが、それらよりもこのガスや便の匂い漏れが最も患者数が多く試行錯誤しながらより良い治療法を研究されているそうです。


ただこの本の最後の章「おわりに」を読みますと
これは神経の痛みであることに間違いないと確信し、早速これを学会などで度々発表しましたが、全く信用されませんでした。
とか、
ところが、病院内の先生方にこの病気のことをお話しても、そんな病気は聞いたこともない、あんまり主張すると私はもとより、病院自体がおかしいの ではないかと思われるのは困る、ほどほどにしてくれと言われてしまったこともありました。
などの記述があり、他の医師の方からはなかなか理解が得られてないようです。何とかこの病気の理解や治療法が広まってほしいですね。

それにしても題名にある「尋く」という言葉、どこに行っても理解してもらえずひたすら病院を尋ね歩く患者さんの気持ちを代弁されているようで、先生の人柄がしのばれます。

2015年11月23日月曜日

読書レビュー7 女性外来の骨盤底筋トレーニング

突然ですが、皆さんは「いきむ」ということができますでしょうか。何を当たり前のことを、と言う人もいらっしゃると思いますが、開業してから結構このいきむということができない人に出会いました。特に若い女性に多かったですねえ。

例えば残便感を訴える人に、「いきんでも全く出ないですか。」と聞くと、「いきむって何ですか。」ときょとんとして聞き返されます。じゃあどうやって排便排尿しているのか尋ねると、何とトイレにじっと座ってだらだら~っと出てくるのをひたすら待っているそうです。いや驚きました。そらしっかり出きらないですな。

ちなみにいきむというのは、まず腹圧をかけ(お腹にぐっと力を入れる)同時に骨盤底筋群(肛門や泌尿器周りの筋肉)を緩めるという一連の動作になります。この緩めるというのが全くできないと、骨盤底筋群協調運動障害という状態になりますが、上記の人たちはここまでではなく、そもそも骨盤底筋群が意識できない状態だと思われます。例えば足の指でチョキやパーができない人、この場合は足の指の筋肉が意識できないので、指が動かせないんですね。同じように骨盤底筋群を意識していないと、どこの力を入れるのかぬくのかが分からず、いきむということ自体が分からなくなります。

ところで骨盤底筋群とは何でしょうか。それは骨盤底にある筋肉です。って身も蓋もない答えですが、それなら骨盤底とは何なのでしょうか。骨盤底とは…検索したほうがわかりやすいと思いますが…骨盤の下の穴、恥骨から坐骨、尾てい骨までを含む部分です。生殖器と肛門の周りにある筋肉と靭帯などから構成されていて、内臓を下から支えています。

一般的にこの骨盤底筋群が注目されるのは、緩み過ぎによる尿もれや便もれ、子宮脱などです。女性は尿道が短いため、骨盤底筋群が緩んでいると少し腹圧がかかっただけでも尿もれを起こします。また高齢の女性などで緩みがひどくなると子宮が体外へ出てきます。

これらの例は筋肉の力が弱まり、普段から緩んでいることにより起こる症状ですが、それとは別に骨盤底筋群自体は弱まっていませんが、あえて緩んでいる状態にしていることにより起こる症状があります。それがいわゆるガス漏れというものです。あえて緩んでいる状態というのは、骨盤底筋群を伸ばしている状態ということで、要は姿勢が悪いということです。

分かりやすい例を挙げましょう。あぐらをかいて背中をまっすぐ立てた姿勢で、おならをしようとしてください。出せる人もいるでしょうが、大抵は出しにくいです。この状態では肛門が緩みにくいからですね。そこで片方のおしりをクイッと持ち上げてみます。肛門が緩んで、無事おならが出せました。おしりを片方持ち上げるとそのおしりの方向へ骨盤底筋群が引っ張られ、結果緩んでしまうからなんですね。ということは左右に傾いて座っているなどで姿勢が悪い人は、常におしりの片方を持ち上げた状態なわけで、これではガスが来ても我慢できずに出てしまいます。

では対策としてどうしていけばいいでしょうか。それには次の3つのトレーニングが必要です。1番から順番に行っていきます。

1.骨盤底筋群をはっきり意識する
2.正しい姿勢を身につけて、骨盤底筋群のゆるみを防止する
3.ゆるんだ骨盤底筋群を鍛えて強さを取り戻す

いきむことが分からない人は1番のトレーニング中心で。
ガス漏れがある人は1番と2番を中心に。
尿もれがある人は1~3番を順にトレーニングします。

そして、具体的なトレーニングのやり方は?というところで、ようやくこの本の紹介になります。いずれの段階も具体的に写真やイラスト入りで、詳しく解説してありおすすめです。
1.の意識の仕方などは、女性限定ですが膣に指を入れるやり方まで載っていますので、誰にでもできるようになるでしょう。正しい真っ直ぐな姿勢も、写真付きでしっかりとした説明がついています。骨盤底筋群が気になるかた、上記の症状が気になるかたはぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

読書レビュー6 100歳までシャッキリ!! 座るだけ体操

当院には過敏性腸症候群の患者さんが多数いらっしゃるのですが、肩こり・首こり・腰痛の患者さんも結構いらっしゃいます。一方は内科でもう一方は整形外科的な症状ですが、両方に必ず共通していることは、皆さん姿勢が悪い!

デスクワークに人に顕著なのですが、骨盤が後ろに倒れ、腰が曲がり、背中が丸まり、肩が斜め前方に上がり、首を前に突き出し、顎を上げている、この姿勢が黄金パターンになっています。

この状態では、
首を前に突き出し顎上げ -> 首こり(特に首の付け根の後ろ側)
肩が斜め前方に上がる -> 肩こり(肩付け根と肩甲骨にかけて)
背中丸まり、腰曲がり -> 腰のこり(胸と腰の境目の少し脇腹より)とIBSガス型
骨盤の後ろ倒れ -> お尻のこりとIBSガス漏れ
というように各症状の原因となってしまいます。恐ろしいですね。

こりゃいかん姿勢を良くしなければ!でもどうやって?
という時にこの本がとても役に立つのです。

この本は薄めの小冊子と、ひめトレフィットと呼ばれる30センチ位のストレッチポールのセットで構成されています。内容としては高齢者の方向けに、骨盤底筋群と呼ばれる筋肉の鍛え方の紹介がされています。
ちなみに骨盤底筋群とは、胴体をビンに例えるとその底部分に拡がっている筋肉で、これらが衰えてくると尿もれが起きたり、姿勢が崩れやすくなるとされています。そのため高齢者の方は積極的に骨盤底筋群を鍛えましょうということで、トレーニングがいろいろと掲載されています。

ここで、最初に書いた症状とどういう関係がと疑問に思われるでしょうが、この本にはぜひともおすすめしたいポイントが有ります。それは正しい姿勢の写真が載っていて、正しい姿勢の解説があるというところです。
そもそも正しい姿勢とは、骨盤をまっすぐに立て、腰が前屈も後屈もしないように保ち、肩先が前に行かないよう少し胸を張る状態なのですが、こんなふうに言葉で説明しても大体の人は何かよくわからんという状態になると思います。
そういう時にはやはり百聞は一見にしかずで、掲載されている写真を見ればすぐ理解できるようになります。座位だけでなく立位の姿勢も載っていますので、正しい姿勢をマスターするのに非常に役立ちます。といっても1回では無理ですが、いろいろ試行錯誤しているとそのうちスポーンと重心がまっすぐ通るのがわかる時が来ます。上記の症状でお悩みの方は、ぜひこの本を参考に正しい姿勢を会得してみてください。

ちなみに付属のひめトレポールですが、長さ20センチほどのかまぼこ型のストレッチポールです。
これをお尻の真下に敷いて座ると、身体の傾きが強調されて分かるようになります。きっちりポールの上に乗っかっていると感じられれば、姿勢がまっすぐになっていますので、姿勢を正す訓練に最適ですね。

というわけで、ポールもセットになっていてお得な本です。姿勢に関心のある方におすすめです。

(2015/11/23 追記)かように自身を持っておすすめしていたのですが、アマゾンを見たところどえらい値段がついていました。確か定価は2000円以下だったと思いますので、高かったら本ブログの別記事、
読書レビュー7 女性外来の骨盤底筋トレーニング
に載せています本を参考にされてください。ただこちらにはひめトレポールがついていないので、必要な場合はタオルで自作するか、
ひめトレ公式サイト
こちらで購入されるといいでしょう。