2015年11月23日月曜日

読書レビュー7 女性外来の骨盤底筋トレーニング

突然ですが、皆さんは「いきむ」ということができますでしょうか。何を当たり前のことを、と言う人もいらっしゃると思いますが、開業してから結構このいきむということができない人に出会いました。特に若い女性に多かったですねえ。

例えば残便感を訴える人に、「いきんでも全く出ないですか。」と聞くと、「いきむって何ですか。」ときょとんとして聞き返されます。じゃあどうやって排便排尿しているのか尋ねると、何とトイレにじっと座ってだらだら~っと出てくるのをひたすら待っているそうです。いや驚きました。そらしっかり出きらないですな。

ちなみにいきむというのは、まず腹圧をかけ(お腹にぐっと力を入れる)同時に骨盤底筋群(肛門や泌尿器周りの筋肉)を緩めるという一連の動作になります。この緩めるというのが全くできないと、骨盤底筋群協調運動障害という状態になりますが、上記の人たちはここまでではなく、そもそも骨盤底筋群が意識できない状態だと思われます。例えば足の指でチョキやパーができない人、この場合は足の指の筋肉が意識できないので、指が動かせないんですね。同じように骨盤底筋群を意識していないと、どこの力を入れるのかぬくのかが分からず、いきむということ自体が分からなくなります。

ところで骨盤底筋群とは何でしょうか。それは骨盤底にある筋肉です。って身も蓋もない答えですが、それなら骨盤底とは何なのでしょうか。骨盤底とは…検索したほうがわかりやすいと思いますが…骨盤の下の穴、恥骨から坐骨、尾てい骨までを含む部分です。生殖器と肛門の周りにある筋肉と靭帯などから構成されていて、内臓を下から支えています。

一般的にこの骨盤底筋群が注目されるのは、緩み過ぎによる尿もれや便もれ、子宮脱などです。女性は尿道が短いため、骨盤底筋群が緩んでいると少し腹圧がかかっただけでも尿もれを起こします。また高齢の女性などで緩みがひどくなると子宮が体外へ出てきます。

これらの例は筋肉の力が弱まり、普段から緩んでいることにより起こる症状ですが、それとは別に骨盤底筋群自体は弱まっていませんが、あえて緩んでいる状態にしていることにより起こる症状があります。それがいわゆるガス漏れというものです。あえて緩んでいる状態というのは、骨盤底筋群を伸ばしている状態ということで、要は姿勢が悪いということです。

分かりやすい例を挙げましょう。あぐらをかいて背中をまっすぐ立てた姿勢で、おならをしようとしてください。出せる人もいるでしょうが、大抵は出しにくいです。この状態では肛門が緩みにくいからですね。そこで片方のおしりをクイッと持ち上げてみます。肛門が緩んで、無事おならが出せました。おしりを片方持ち上げるとそのおしりの方向へ骨盤底筋群が引っ張られ、結果緩んでしまうからなんですね。ということは左右に傾いて座っているなどで姿勢が悪い人は、常におしりの片方を持ち上げた状態なわけで、これではガスが来ても我慢できずに出てしまいます。

では対策としてどうしていけばいいでしょうか。それには次の3つのトレーニングが必要です。1番から順番に行っていきます。

1.骨盤底筋群をはっきり意識する
2.正しい姿勢を身につけて、骨盤底筋群のゆるみを防止する
3.ゆるんだ骨盤底筋群を鍛えて強さを取り戻す

いきむことが分からない人は1番のトレーニング中心で。
ガス漏れがある人は1番と2番を中心に。
尿もれがある人は1~3番を順にトレーニングします。

そして、具体的なトレーニングのやり方は?というところで、ようやくこの本の紹介になります。いずれの段階も具体的に写真やイラスト入りで、詳しく解説してありおすすめです。
1.の意識の仕方などは、女性限定ですが膣に指を入れるやり方まで載っていますので、誰にでもできるようになるでしょう。正しい真っ直ぐな姿勢も、写真付きでしっかりとした説明がついています。骨盤底筋群が気になるかた、上記の症状が気になるかたはぜひ読んでみてはいかがでしょうか。